Valuable memory. <後編>





 城に戻るなりアキラはシンイチを連れてバスルームへ直行した。
 隙あらばシンイチに縋りついては「疲れた〜」「最大限に頑張ったよ〜」と甘えたおすアキラをなだめながら、シンイチは自分とアキラを手早く洗った。湯船に浸からせるとすぐに舟をこぎ出したため、早々に風呂から引きあげさせた。寝衣を身につけさせ髪を乾かしてやってベッドへ横にならせれば「あんたも一緒に寝てよ」、である。大嫌いな会合に慣れないベッドでの宿泊はアキラを骨の髄まで疲れさせたようだ。ここまで全力で甘えてこられるのは滅多にない。いや、もしかしたら初めてかもしれなかった。
 まだまだ寝る時間には早かったが、腕を取られるままにシンイチも隣へ横になった。

 たった四日半会わなかっただけなのに、アキラの頬が僅かにそげた気がする。
 冷たく白い頬を指の背でそっと撫でていると不思議な気持ちになる。結婚する前までは一ヶ月に一夜しか会わないことに慣れていた。それが今ではお互いがたった四日半離れただけで淋しさや物足りなさを感じるなんて。
「慣れとは怖いものだな……」
 アキラを抱きしめるのも、こうして一緒に寝てやるのも好きだ。冷たいアキラの身体が自分と同じ体温になるから。吸血鬼は低体温が常なので、人狼ほど体温を上げる必要はないとわかってはいるが、アキラに体温が灯ると深く安堵する。それはアキラが抱き合う度に『シンイチの体温も好きだ。気持ちがいい…』と幸せそうに呟くせいだろう。
 早く同じ体温になれ……と、眠るアキラを深く抱き寄せながら。シンイチはジンやノブナガに話さなかった続きの思い出を、順を追うように思い起こしていた。


*  *  *  *  *


 三日間ほどシンイチはタカトウ主将の居城から出られなかった。それでもなんとか半日の休みをもぎとり、宿屋へ駆け戻るなり女将への挨拶もそこそこに部屋へ直行した。
「待たせて悪かった。……アキラ? どこだ? いるんだろ?」
 部屋にいないため備え付けの風呂場を覗く。窓もなく電気もつけていない真っ暗な中にアキラの気配がする。湯船の中を窺えば、アキラは狭い湯船の中で膝を抱えて横たわり眠っていた。
「……2m近い大男が随分とコンパクトに収まったものだ。器用だな」
 電気をつけて改めて観察すれば、尖った耳さえ除けば青白い顔のせいで殺害された人間の死体にも見えて、あまりいい気はしない。
「おい、起きろ。どうした? どこか辛いのか?」
 アキラは半分ほど瞼を開いて、だるそうに答える。
「……なんか疲れたみたい。もっと体力あるはずなんだけどなぁ」
 みっともねぇ……と忌々しげに零すと弱々しく起き上がった。
「疲れだけで済んでるのか? どこか大怪我をしてたりは?」
「あるわけないじゃん」
「そんなに疲れているなら。その……もう一度吸血するか? 少量でいいなら最初の時のように……アキラ?」
 自ら性交を誘ったようでシンイチは恥ずかしさに眉根を寄せたが、静かな瞳で見つめられていることに気付いて首を傾げた。
「……まだ腹減ってないから。こんなの棺桶で寝たらすぐ治る」
 シンイチが差し出した手を素直にとると、アキラは少々ふらつく足取りながら自力で部屋へ戻った。
 椅子に座ろうとしたアキラの腕を引いてベッドへ横たわらせれば、じっとりと睨めつけてくる。
「このベッド、スプリング柔過ぎ。寝てたら腰が痛くなったよ」
「それで湯船か。俺なら湯船の方が楽じゃないが。寝るには硬いし狭過ぎる」
「俺には湯船より悪いベッドだよ。こんなとこに置いてった奴がよく笑えるね」
「すまん。だが湯船に収まって寝た吸血鬼なんて、この世でお前くらいじゃないのか?」
 不憫に思いつつも笑いを噛み殺しきれなかったシンイチを、アキラは長い足でげしげしと蹴った。

 笑いを収めたシンイチはアキラの横へ腰かけ、改めて頭を下げた。
「…オークの主将が住む城を。それを護る全部のゴーレムと警備の複数のオークと、魔法を遣うハーフエルフ三人をたった一人で。それも数時間で落としたんだってな。礼を言わせてくれ」
「別にいいよ。ベッドは寝心地悪いし、あんたは寝てるしで暇だっただけ。それより話し合いは上手くいった? もうあんたは闘わなくていいんだろ?」
「突然全面降伏されたんだぞ? まだ人狼側も自体が飲み込めていなかったが、とりあえず戦争終結宣言だけは締結した。もうほぼ全て人狼側の主張が通ったに等しかった。オーク側は恐怖で竦み上がっているような状態で……お前、相当な能力者だったんだな。オーク側から漏れ出る話が耳に入るたび震えが走った。たった一人のくせに数人程度の命しか奪わずに落城させる鮮やかな手口は、歴史に残り語り継がれるだろうよ」
「迷惑な話だね」
 アキラの偉業に興奮を抑えきれず語ったシンイチは、返事とは思えない素っ気なさに勢いを削がれ、訝し気に問う。
「……迷惑って……?」
 見つめ返してくる黒い瞳からは感情が消えている。突然の変化に困惑させられ、本当は頭部を強打でもしたのだろうかと心配になる。
「怖くなった? 毒や能力であんたも俺の好き勝手にされんじゃないかって思う?」
 唐突に、冷たさを伴うような平坦な声音でアキラに訊かれた。
「別に。お前はそんなことをしない奴なんだろ?」
「そうさ……しないよ、そんな面倒なことなんか。だけど信じてもらえたことなんて……俺と対等でいてくれた別種族の奴なんて一人もいない。異様に敬うか恐れるかしかないんだ。同族の奴等は俺を恐れながらも、この能力や系譜を欲しがるだけ……」
 黒いガラス球のような瞳を隠すように、長い睫毛が濃い影を落とす。
「偵察だけのつもりがさ、ゴーレムが俺を捉えようとわらわら出てきて。あしらってたのに筋肉バカのオークどもが束になってきやがって。しかもハーフエルフが三人がかりで魔法攻撃ときた。オークとエルフなんて未来永劫険悪とばかり思ってたのにさぁ。……本気出すしかなくなっちまった」
 チッと腹立たし気に舌打ちしたアキラはベッドから身を起こして溜息を吐いた。
「……帰る。一食分の借りは返した」
「帰るって……どこへ。俺は来月の満月の夜、どこへ行けばいいんだ?」
「いいよ、来なくて。あんたとはもう会わない」
 抑揚のない声にシンイチは顔をしかめた。
「何故先ほどから突然、そんな態度をとる。俺が何か気に障ることでも言ったか?」
「まだ、何も。けどこの先いつかは、言う。もう見えてる。だからさようなら。一応俺にだって城くらいあるよ」
「この先とは何だ。勝手に俺の行動を決めつけるな。……アキラ?」
 ベッドから降りたアキラの足元はまだ心許なかった。まだ疲労が抜けていないのだろう。ベッドへ戻そうと腕を伸ばしたが、かわされる。
「あんたも……そのうち俺を厭い去る。例外は今までなかった」
 吸血鬼はふらつく脚に力をこめると、凛とした背で断言した。

 突き放そうとする背中に悲哀を感じてしまうのは何故だろう。まだこいつのことは知らないことだらけなのに、こうも胸を締めつけられるのは。自分よりも強い男が漏らす強がりごと、きつく抱きしめてやりたくなるのはどういうことなのか……。
「何百年例外がいなかったかは知らん。だが俺が初めてのケースになるかもしれんじゃないか」
「そう言っておいて逃げる奴を、俺は数えもしなくなったよ」
 アキラが頑なにこちらを向かないのは“あんたも同類だ”と思っているからだ。
 決めつけられるのが酷く腹立たしい。根拠はないが、俺はお前を恐れないと信じさせたくて心底腹が立つ。しかし何をどう言えばこいつに届くのかわからない。
「なあ。お前のどこにそれほど厭われるようなことがある? 高い能力・高貴な血統・優れた美貌。全て美点だろ。お前が少々変わっているのは食にこだわりがあることくらいじゃないか」
「……あんた、それ本気で言ってんの?」
「冗談に聞こえたか?」
「『More than enough is too much.』って言葉知ってる?」
「『過ぎたるは及ばざるが如し』だろ。下級種族でもそのくらいの学はある」
「や、そういう意味じゃなくてさぁ」
 アキラの肩の力が抜けた隙を見逃さず、その肩に手をかけて強引に振り向かせる。
「お前はお前。俺は俺だろ。お前がどれほど優れていようが俺には関係ない。俺がお前より劣っていようが、お前に関係ないようにな」
 やっと言葉が届いたのか、アキラが目を瞠った。しかしすぐにまた表情は消えてしまう。
「……口先だけだよそんなの。知的生物は例外なく、他者と己を比較することを止められない。あんただって俺の能力の高さを人づてに聞いて震えが走ったんだろ。それは自分の能力と比較して感じた恐怖だ。今は驚きや物珍しさや興奮が勝ってるから意識してないだけ。冷静さが戻ってきたら、じわじわ怖くなるのさ」
「だが俺には使わないんだろ、その恐ろしい能力は。俺を大事にすると言ってたじゃないか。あれは嘘か?」
「嘘じゃない。けど……そんな口約束を信じ続けていられるわけがない」
「今すぐ俺から吸血しろよ。一回の吸血につき、お前は俺のいうことをひとつきくんだろ。なら、俺を信じてみろと命じてやる」
 力強く言い切られて、今度は確実にアキラに表情が戻る。たとえそれが怒りからであっても、ないよりはマシだ。シンイチは煽るように顎を少し上げて見返す。
「っ……バカじゃねぇの。あんな印は嘘だよ。本気で結ぶならもっと準備がいる」
「嘘かよ。あんなに綺麗だったのに……。まあいい。今度は本当に結べばいいだけのことだ」
「綺麗って……。あんな印をマトモに結んだら、あんたは毎月俺から吸血されんだよ? どちらかの心が吸血を拒絶したら、反動で精神か心臓を壊されかねないんだぜ?」
「そうすればお前は喰いっぱぐれないから、ささくれもできんだろ。俺はそれでいい」
「はあ? 俺にささくれが出来たからって、それこそどうでも良過ぎじゃん。ないの、何か他に俺に叶えてもらいたいことは。それを聞かない限りはあんたから吸血できねぇよ」
 施しは手首からの血だけでもう沢山だ、とアキラが腹立たし気に壁を叩いた。
「オークとの戦争も終わったし、他に叶えてもらいたいことなどない」
「もっとよく考えろよ! 吸血鬼の有効な使い途なんて山ほどあるだろ!」
 ずれたところでムキになるアキラが可笑しい。論点までもずれたことにこだわらないのも。
 シンイチは顔が笑いそうになるのを堪えるため、わざと難しい顔をつくり腕組みをして、ずれた話に乗ってみる。
「山ほどってなんだよ。例えば?」
「たっ…例えば…………集団催眠かけさせたり、潜伏中の敵の居場所を探らせるとか。空から敵に火をかけたり、人間を吸血鬼に変えさせ……ようとしても、95%は死んじまうけど」
 しどろもどろで答える様にとうとうシンイチは笑い出した。
「戦い関連ばっかじゃねぇか。おまけに最後のはなんだ、失敗前提か!」
「うっ煩いよ! 仕方ないだろ、コントロールが細かく利かないんだから」
「細かく利かないなら尚のこと、危なっかしくて頼めねえなあ」
 盛大な舌打ちをしたアキラが口をへの字に曲げた。その顔がまるで子供のようで、更に笑いを引き寄せた。

 本気で気分を害される前にと、シンイチは咳ばらいをひとつして真顔に戻した。
「20年続いた戦いを終わらせたことが20年分の先払い、ってことで俺としては十分だ」
 アキラは口を半開きにして驚いていたが、やがて呆れた顔で両肩を竦めてみせた。
「あんたが欲無しの変わり者なことはよーくわかった。随分と気前がいいことで」
「俺はもともと血の気が多いから、あれくらいどうということはない。それにな、お前には言われたくないぞ。オークの主将の居城を落としたのを吸血一回分にカウントしちまう、欲無しの変わり者のくせに」
「自分の血液の希少価値と大事さをちっとも理解してねぇよこの人狼は……。まあいいさ、あんたがいいってんなら俺は別に?」
「ああ。気楽でいい」
 フッと微笑んだシンイチをアキラは落ち着かなさそうに見つめていた。それでも暫くしたのち、ぎこちなく笑い零した。

 吸血鬼は人狼と違い集落を作らない。頻繁に集会を行い結束を深めることもなく、それぞれが幼い頃から“個の王”として点在し、関係を持たないと聞いたことがある。プライドも能力も高い吸血鬼が同族争いで無駄に個体数を減らさないため……だったはずだ。それは親子間でも同じで、親は生きていても子の能力が高まれば独立させる、とも。
 アキラは多分、そんな種族の中でも特に秀で過ぎた能力が災いして、誰と心を交わし合うことも、愛し愛されることもなく。そして何の代償も打算もなしに頼ることも頼られることも知らずに、長い時を飯に困りながら孤独に生きてきたようにシンイチには思えた。

「飯を調達するのも一苦労なんだろ、お前。せっかく見つけた不死者の餌なんだ、お前から離れるのは損しかないぞ。教えておけよ、お前の居城を」
「どこまでお気楽な頭してんだよ……。今までの話で理解できなかった? 俺は自分の能力を制御しきれない危険な奴で、吸血鬼の中でも化け物扱いされてんの、わかんねぇ? それにあんたはもう俺の能力を使う気ないんだろ。なら、俺のいいトコなんて純血のみの系譜くらいしかない」
「吸血鬼の系譜なんて、それこそ俺には全く興味も価値もない」
 捲し立てた言の返答があまりにあっさりとしたもので、アキラは気抜けたように肩を落とした。
「……だから……あんたはには損しかないじゃん。このまま別れた方があんたのためだよ……あ。もしかして、俺とのセックスが気に入ったとか?」
「それについては俺は意識がほぼ飛んでたようで、気に入るも何も、記憶があまりないのでわからない。……すまない」
 毒のせいとはいえ体を重ねたというのにこれほど記憶がないと、流石に申し訳なくてシンイチは深く頭を下げた。
 ほんの数秒。哀し気な表情を浮かべたアキラはすぐに自嘲の混じる苦い笑みを浮かべた。
「あんたヤられんのは初めてだったから気を遣ってやったのに、意味なかったね。……ほら、ただの化け物より悪い。あんたにとっては利用価値がひとつもない上に、血はしっかり奪われるんだから。別れた方があんたにとっては正解さ」
 ハッと吐き捨てるようにアキラは短く嗤うと、また顔を背けてしまった。

 両親がいない不死者は自分も含めてそう珍しくはない。だが俺はこいつと違って、親のように面倒をみてくれたタカトウ夫妻、孤児仲間、純血であっても俺を認めてくれた奴らがいた。孤独ではなかった。それでも心の底にはこびりついた汚泥のような劣等感があった。
 種族を超えて番となった亡き両親を誇らしく思いこそすれ、憂えたこと等ない。けれど心の奥底では純血種が当たり前にもつ能力を、努力の継続でしか維持できない悔しさがあった。他の混血児のように、欠けている人狼の純血種の能力分、もう片方の親の能力が備わっているわけでもない自分。いつか母が持つ魔女の魔力が出るかと秘かに願っていたが、なにもなく成人を迎えた時からの、己の血への落胆……。
 そんな俺の血を『美味い』と評し、しかも吸血鬼からしたら下級種族の人狼の俺を『運命の存在』と口にして憚らない変わり者と出会えた。
 階級差・能力差・血筋。全てにおいて劣る俺からは絶対に言えないけれど。本当は運命の相手であって欲しいと心の底から願っているのは、俺の方なんだ……。

 窓の向こう、黙って月を見つめている背へ話しかける。
「……家まで送ってやる。俺の背中に乗って行け。そんなに疲れていたら飛ぶのも面倒だろ」
「いらない。歩いて帰れる。体力が戻ったら飛べるし」
「そう言うな。その……俺はどうやらお前に興味が湧いてしまったようなんだ」
「俺は半減してるよ」
「残った半分は食料としての興味か。それで十分だ」
 配慮や遠慮などの余計なものが消えて結構なことだ。
 シンイチは衣服を脱ぐと狼へ変化した。狼になったシンイチをアキラはどこか頼りない瞳で見下ろしている。
「……あんたホントに俺の話を聞かないね。思っていたより……勝手だ」
「想像通りじゃなくて面白いだろ。さあ乗れ」
「嫌だよ。けっこう乗り心地悪いんだもん。もっとフカフカの綿みたいかと思ったのに、獣毛の下で筋肉や骨がすっごい動くし、だんだん暑くなるしさぁ」
 宿屋につく頃には俺まで汗かいちゃってて、即シャワー浴びちゃったよ……などとぶちぶちと文句を呟いている。
「勝手な夢みてんなよ。ほら、おいてくぞ」
「行先も知らないくせに」
 アキラの長い足に狼は体を擦り寄せる。黒い上質なスラックスに狼の毛がつくように、何度も。断って去られたとして、後でその毛を見て『変わり者』の人狼を、強気を装うしかできないこの吸血鬼に思い出させるために。
 散々擦り寄った後、アキラの足元に身を伏せた。あまり口が回らない自分にしては精一杯説得したつもりだ。下級種族の自分からは、これ以上はもう出来ることも、言える言葉もない。後はアキラの気持ち次第だ。
 
 地に根を張ったように長い足は全く動きをみせない。それでも辛抱強く待ち続けていると、とうとう頭上から深い溜息と共にアキラの声が降ってきた。
「立ってくれなきゃ乗れないじゃん……」
 弱くかすれてはいても、獣耳は零すことなくしっかりと言葉を拾う。
 身を起こした狼の太い首に膝を折った吸血鬼が長い腕で縋りつく。
「あんたにとっちゃ疫病神でしかないけど……気が向いたら会いに来て。満月の夜に」
 シンイチは返事の代わりにアキラの冷たい頬をそっと舐めた。



*  *  *  *  *



シンイチはひっそりと吐息をついた。
─── あの時のアキラは不安定で儚げで。今にして思うと随分と若く、強がりがまた可愛かったなぁ。
当時の俺もまだまだアキラに対して警戒心もあったし、種族階級差や己への劣等感が強かった。そしてなにより若かった。だからアキラの可愛さに気付ける余裕もなく、せめて人狼の中だけでも最も秀でた男になろうと勉学・体力・能力磨きに明け暮れた。
 いつしかアキラから追っかけてくるようになっても、まだ自分はアキラにふさわしくないと逃げ回ってしまった。そのくせ気付かれないという気楽さで、自分からはアキラへ何度も求婚してみせたりもした……。
 出会ってすぐに『お前はお前、俺は俺』などと嘯いておきながら。あの時アキラが言っていたように、自分と比べずにいられなかったのは俺自身の方だった。
 最初から答えなど出ていたのに。どれほど臨んだって努力してみたって、種族差も能力差もどうにもならない。そんなものとは違う価値観を俺達は持っていたし、それが一番大事だったから魅かれ、求めあったんだ。それなのに時間だけはたっぷりとあるからと、俺は随分と遠回りをしてきたものだ。そしてよくぞこんなバカな俺に付き合って、長い間独り身でいてくれたもんだ。……まあ、俺を妻帯者だと誤解してたから求婚を言い出せなかったみたいだが。
 
 俺が時間をかけて変わったように、アキラも変わっていった。
 give&takeを信条に生きてきたようだが、いつしか俺に振り返りたいと思えるほどの幸せを、なんの見返りも要求せずにただただ惜しみなく俺に与え続けてくるようになった。与えられることこそが幸せだとでもいうように。そんな変化を本人はどう考えているのだろう。
 お前のように俺も安寧と幸せを、最愛のお前に与え続けたい。俺はお前と重ねていく日々が愛おしいから、振り返ることも楽しいと知った。何度も思い起こして幸せを噛み締めるたびに、思い出は鮮やかさを残したまま胸に刻みこまれていく。
 いつか。俺と暮らす日々の記憶が薄れさせると信じている。今もお前の胸底に暗く沈む、振り返ることを恐れさせる苦痛な過去を。そうして、例えばこの数日のようにまた離れても、心があたたかくなるような思い出で退屈や寂しさを紛らわせられるようになればいい。お前と暮らすようになって変わった俺のように。

 シンイチの腕の中でアキラがもぞりと動いた。寝返りかと思い腕を緩めてやる。覚醒が近いのかと思ったが、そのまま、また微動だにせず眠っている。
 アキラの寝顔は昔も今も、なんら変わりなく見える。眠るアキラは起きている時とは違う静謐な美しさがある。人間が神や天使の偶像を作っているが、時折そのすべらかな頬が眠るアキラと重なるのだ。
 けれどその薄い瞼が開かれて見つめ返してくる瞳は昔より何倍も思慮深い色味を湛えて、満点の夜空よりも美しく輝いてみえる。どちらも甲乙つけがたいが、やはり起きていて様々に表情や色を変える瞳を見たいと思う。
 「う………ん…」
 珍しく、寝言というほどではないがアキラが声を発したため、シンイチはアキラの顔がより見える位置に体をずらした。
 アキラは深く寝入ると寝息もとても静かで、寝返りや寝言もほとんどない。だから時折、呼吸を確かめてしまう。いつしか深い眠りの底についたアキラは心臓も眠らせて石膏像のように目覚めなくなってしまうようで怖いのだ。昔よりは健康になったとはいえ、無茶を重ねて生きてきたツケは身体のあちこちにしっかり潜んでいる。加えて、残念ながら俺よりもけっこうな年上ときてる。
─── まだまだ俺はお前と暮らしたいんだ。まだまだまだまだ早いぞ……。
 今のように寝返りや微かな寝息に近いような呟きなどの反応はとても貴重なだけに安堵する。もう一度するかなと、シンイチは頬をゆるめて覗き込んだ。

 どれくらい眺めていただろうか。薄い瞼がゆっくりと開かれていく。
「…シンイチ……」
 首を伸ばし、再び瞼を閉じて口付けをねだる甘い声に応える。少しひんやりとしている唇を軽く数回吸ってやれば、アキラがくすぐったそうに首を竦めて逃げる。
「もっと深いの、してよ」
 素直な要求のままに深く、頭の角度を変えて唇を重ねる。舌を絡め擦りつけ合い、牙を音を立てて啄み合う。繰り返し、繰り返し。鳥達がくちばしで餌を与えあうように、二人は甘露な愛念を口付けで伝えあった。
 濡れた唇を赤い爪先で拭われたアキラが、甘い吐息交じりに呟く。
「……五日間もあんたとキスできないのが、一番堪えた」
「すごい殺し文句だな」
「あんただって同じだったの、バレバレだから」
「そうか」
「うん。あんたの言葉数が少なくたって、ちゃあんと、わかっちまうんだよ」
 くすくすと笑う白い額に軽くキスを落とす。
「今のもわかるよ」
「何を?」
「『そろそろ俺も眠くなってきた。お前もまだ寝れるだろ。今度は一緒に寝よう』って意味でしょ? いいよ。俺もまだ寝たりないから」
 寝ていないことを見抜かれていたことにシンイチは僅かに驚く。
 そしてこちらが考えていないことを先ほどから自信満々に。且つ、ちゃっかり自分の要求まで重ねて言っておきながら。……ほら、こちらの機嫌をこっそりと慎重に伺っている。こういう吸血鬼らしからぬ臆病な可愛さは、昔からちっとも変わらない。
 アキラの肩へ布団をかけ直して、艶のある黒髪を撫でてやる。
「そうか。じゃあ付き合ってもらおうかな。おやすみ、アキラ」
「うん。おやすみ、シンイチ」
 アキラの「ふあぁ…」と零したおおきな欠伸がシンイチにもうつる。
 欠伸で眼尻に浮かんだ涙をアキラがそっと舐めとってくれる短い間に、シンイチにも深い眠気がおりてきた。
「……眠い。寝る」
 シンイチは小さく告げるとそのまま眠りに落ちていった。
 先ほどまでの自分のように、伴侶の寝顔を愛しそうに見つめるアキラが、ブラウンの前髪をかき上げて同じように額へ軽いキスをしたことも。「愛してる」と、低く掠れた声で何度も囁き続けたことも知らずに。



*  *  *  *  *



シンイチが義理の息子達の家に宿泊してから、一ヶ月が過ぎた頃。珍しく。いや、初めてノブナガ一人で二人の居城へ訪ねてきた。
ロビーで手土産を渡しつつ挨拶をすませたノブナガは、「センドーさんと二人だけで話しがしたいんすけど……。できれば、声が漏れないような部屋で」と。かなり緊張した面持ちでアキラとシンイチへ願い出た。

 地下の書庫は壁面天井まで本棚で埋め尽くされている。書籍と本棚が並ぶ三枚の壁は隣室へ防音・吸音材となり、重厚な扉を閉め切れば声を潜めなくとも会話が廊下へ漏れる心配はない。
 それなのに、部屋の中央に配置されている、これまた重厚なヨーロピアン・アンティークの机を挟んで向き合うように座ったアキラとノブナガの間には無沈黙が流れていた。
 アキラはノブナガから口火を切るのを待っていたが、仕方なく口を開いた。
「いくら耳がいいシンイチでも、ここでの話は一階には届かないよ?」
「う。すみませんっ。マキさんには後でもう一度謝りますんで!」
「別に謝らなくていいんじゃない?」
「だってマキさんだけのけものにしたみたいで、感じ悪いじゃないすか」
「面白そうな顔してたけど? あのね、先に言っておくけど。もしシンイチが何を話してたか聞きたがったら、俺は全部喋っちまうよ」
 俺は君よりシンイチが大事なんでね。余計な不安とか抱かせたくないし? と悪びれもなく語るアキラに、ノブナガは赤くなりながら「もちろんです!!」と声を張り上げた。

 何故ノブナガが頬を赤らめたのか理解は出来なかったが、アキラは面倒になってきたのを堪えて話を続ける。
「だからね。気兼ねいらないから、何でも聞きなよって言ってんの。俺は一応、ノブナガ君の義理の父親でもあるんだし」
「センドーさんが俺の義理の父親………。光栄すけど、考えたこともないす」
「まあ俺もないけど。……あ、ごめん正直で。いや、ノブナガ君はいーんだよ可愛いから。けどねぇ、ジンもかと思ったら、それはちょっとな〜。俺よりあいつの方が嫌がりそうで」
「俺は全く可愛いかないすけど。でもそっすね、ジンさんは俺と違って頭がいいから。常に何手も先を考えてるっつか」
「あ〜ね〜。あいつなら『死んでもあんたには甘えない』とか言いそう」
 今のジンさんにそっくり、とノブナガが声を出してここへきて初めて笑った。

 緊張がほぐれたのか、ノブナガは興味を隠さない瞳をアキラへ真っ直ぐ向けてきた。
「あの……。真相が未だにどこにも漏れないでいるってことは、機密なんだって俺でもわかります。だから絶対誰にも言わないんで。オークの主城を一人で落とした時の話を聞かせて欲しいんです!」
「なんのこと? それは人狼に伝わる御伽噺のことでしょ。俺に聞かれても」
「いや、そーいう小芝居はいいっすから。頼んますよ〜。もう俺想像するだけで、すっげぇワクワクしちゃって。マキさんからさらっと聞いた時はすげー怖くてブルブルきてたんすけど。段々、どうやってゴーレム倒したのかとか、エルフが使った魔法って何だろうとか、すっげぇ気になって気になって」
 一人掛けの重い椅子を倒す勢いで熱弁をふるった人狼の黒い眼はキラッキラに輝いている。
「だから〜俺は関係ないって」
 言葉では突っぱねてはみたが、瞳の輝きに思わず苦笑してしまったのがダメだったようだ。
 机の分厚い天板をバンッと両手で叩いて、ノブナガは身を乗り出す。
「絵本ではボブゴブリンの城になってるけど、実際はオークだったんすよね。オークの方がボブゴブリンよか強いじゃないすか。ねぇ、聞かせて下さいよぅ〜。ジンさんに内緒で来たんすよ俺〜」
「……ジンにも?」
「はい〜。相談したけど、センドーさんに借りを作るのはやめときなって止められて。でも俺、ガキん頃から冒険譚が好きで好きで。しかもそれがお話じゃなくて現実で、あのキーアがセンドーさんだったって知っちまったら聞かずにいられなくて! 最初はマキさんに聞こうかなって思ったけど、あの時詳しく教えてくんなかったってことは機密だからかもって考え直して」
 それに本人に聞いた方が絶対迫力あると思うんすよ! と、ノブナガは拳まで振りだした。
 アキラは少々考えるそぶりを見せたが、椅子に深く腰かけ直すとニッコリと口角を上げた。
「仕方ないなぁ。じゃあ俺が特別に、ノブナガ君にだけ。キーアから直接聞いた話を……シンイチにも教えなかった部分まで、詳しく語って聞かせてあげるとしようかな。……秘密にできるんでしょ?」
「もちろんす!! ジンさんにも教えませんっ。お願いしまっす!!」
 90度に腰を折るお辞儀をされたアキラは「そこまでしなくていいから」と、座るように椅子を指差した。
「あざっす!!」と満面の笑みで告げたノブナガは力強く椅子に座り直した。


*  *  *  *  *


 二人が書庫に籠ってから一時間ほど経過したが、扉が開く気配すら感じられない。何を話しているのか流石に気になって、シンイチは使い魔に赤ワインのジャムと紅茶を用意させて自ら給仕をしに地下へ降りた。
 分厚い木製の扉の前に立つと、奥から低くボソボソとしたアキラの話し声と、時折「うおおお!」とか「それでそれで?」といった興奮気味のノブナガの声が聞こえてくる。
「おい、お茶のおかわりを持ってきてやったぞ」
 ノックをするとすぐに扉が開かれ、ノブナガが高揚した顔で出てきた。
「マキさん自らなんて、すんません! ありがとうございますっ」
「なんの話をしているんだ? 随分と盛り上がっているようだが」
「え。いやその。えへへへへ……」
「俺も同席していいか?」
「だっ、ダメっす! 男の純情をバ、あ、いやあの、えと。すんません!」
 慌てるノブナガの後ろから長身のアキラがシンイチの手元を覗き込む。
「あ、俺の好きなロシアンティー。ありがとう。もう俺、話疲れたからシンイチと一緒にサロンで飲むよ」
「そんなあ!! 今一番盛り上がってるとこじゃないすか!!」
「シンイチが淋しがってるのを俺が放っておけると思うの?」
「うっ。…………思わないす」
 盛大に眉尻と肩を落としたノブナガを全く気にしていないアキラにシンイチは苦笑した。
「別に俺は淋しくはない。少々気になっただけだ。何の話か知らんが、最後までしっかり聞かせてもらえ」
 ノブナガの頭をシンイチは大きな掌でぽんぽんと叩くと、ノブナガはキョロリと目線でアキラにお伺いを立てた。すると今度はアキラがシンイチの機嫌を計るように視線を向けてくる。
「すまんが、宜しくな」
 念を押されてしまい、アキラは少々呆れ顔で紅茶が乗るトレイへ手を伸ばした。
「……あんたは自分以外の誰にでも甘いんだから」
「あっ。それくらい俺がします! センドーさん、マキさん、まじすんません〜」
 横からトレイを奪い去り机の上で紅茶を入れるノブナガを尻目に、アキラはシンイチの耳に唇を寄せた。
「俺へのご褒美は後できっちりもらうから」
「ロシアンティーを用意してやったろ。じゃあな」
「そんだけ?」
「ジャムがなくなったらまた持ってきてやるよ」
 軽く流して行かれてしまい、アキラは口先を尖らせる。
「……前言撤回。あんたは自分と俺には厳しい」
「はい? 何すか?」
 主人に呼ばれた犬のように駆け寄るノブナガに、「何でもないよ。えーと、どこまで話したんだっけ……」とアキラは溜息交じりで返した。


*  *  *  *  *


 アキラの数歩後ろをノブナガは興奮冷めやらぬ様子で階段を上った。三階まで吹き抜けになっている一階のロビーからは二階の廊下を歩いているシンイチが見えた。
「マキさん!」
 アキラの脇をすり抜けてシンイチのいるところまで一気に駆け上がったノブナガは「全部聞かせてもらいましたっ」と元気よく報告した。
「随分楽しかったようだな」
「はい! そりゃもう! ありがとうございます、マキさんのおかげです。今度改めてお礼しに、あ、そうだ。……マキさん」
 突然真顔に戻ったノブナガはアキラが一階のロビーで使い魔になにか申し付けているのを確認してから、シンイチにのみ聞こえるように身を寄せた。
「……センドーさんだけは敵に回さない方がいっすよ。くれぐれも怒らせないように! 浮気なんてしたら砂粒にされますよ」
「なんだそりゃ」
 失笑するシンイチの前でノブナガは「まじすから、命大事に…! あ、俺が今日来たことはジンさんにも内緒でお願いします」と青い顔でぶるぶると身震いをした。

 二人へ改めてきちんとお礼と挨拶を述べたのち、今では人狼の中で最速のスピードを誇る俊足でノブナガは風のように去って行った。
「さて……どうする、これから。お茶でも飲むか?」
「お茶よりはお酒がいいけど、それほど飲みたい気分でもないかな」
「コンサバトリーに酒でも運ばせて、ゆっくりするか?」
「いいね。少し月光浴したい。朝まではまだ時間もあるし」
 シンイチが住むようになるまでは草花もなければ曇ったガラスとほこりだらけだったそこは、シンイチが使い魔達と片付けて改装した。もともとが装飾が施された美しい構造だっただけに、少々手を入れただけで見違えるほど美しいガラスの部屋へ変わった。白い木製のテーブルセットと使い魔達がせっせと育てている様々な花や植物が映える温室は寒さを忘れさせる。
 改装してからは秋冬の期間、アキラはここで長く過ごすようになった。そのせいだろうか、植物に興味のなかったアキラ自らが使い魔に季節ごとに花を入れ替えさせて、褒美のチョコレートボンボンをはずむようになったのをシンイチは知っている。

 デッキチェアに体を預け、ガラス屋根の向こう、流れが早い雲の隙間から瞬く星を見つめる。薔薇や柊木犀の柔らかな香りと、夜の穏やかな静けさが心身に染みわたっていく。
「……ノブナガ君は賑やかだから、まさに嵐が去ったあとの静けさみたい。今日は喋り疲れたなぁ」
 一ヶ月分喋った感じ……と、眠気か疲れかわからないがアキラが小さな欠伸をする。
「お前、何をノブナガに吹き込んだんだ?」
「全然? オークの城を落とした時の話を聞きたがったから、話しただけ。あんま食いつきがいいもんだから、俺も興に乗って長話になっちゃったよ」
「あー。俺も昔、お前に聞いたよな。ああいう話は血が滾るもんだ」
 確かに途中で止められたら消化不良になる、とシンイチは懐かしむように自分の言に頷いた。
「シンイチに教えたのはかなり昔だよね。俺、実はもうあん時の戦いはほとんど覚えてなくてさ。だから先月あんたと忍び込んで観た、人間の作ったホラー映画の話を改変してみたんだ」
「あのゾンビ映画をか! 全然話が違うぞ? あ、そうだ。あいつが漏らした『男の純情』って何のことだ?」
「ゾンビをオークに変えたらけっこううまいことハマったんだよ。男の純情は……主人公が片思いの女の子を地下に隠して、一人で闘ったじゃん。そいつを俺に、女の子をシンイチにしたから、かな?」
「お前………後から嘘だとバレたら面倒だぞ」
「ノブナガ君、誰にも言わないって鼻息荒くしてたし? 真相を知るのはオークの主将とあんたしかいないから、バレやしないでしょ。まあいいじゃん、喜んでたんだし」
「そういう問題か。あの見事な戦いを、そんな出鱈目な作り話ですませていいのかよ……」
 シンイチは片手で己の頭を抱えながら、呆れが滲む視線を向ける。
 デッキチェアから立ち上がると、アキラは両手指を組んで伸びをした。
「いいの。落城なんかより、シンイチを落とせたことの方が大事なんだから。あんたとの出会いや、俺に擦り寄ったあんたの温かさとかは、今でも全部覚えてるよ」
 アキラがしなやかな身のこなしでシンイチの上に四つん這いでのしかかった。褐色の頬や額に何度もキスを降らせてくる。
「わかったからもうやめろ、くすぐったい」
 すっきりした額を赤い爪先で弾かれたアキラは頬をゆるめて上半身を起こした。
「ね。それよりさ、また来年のハロウィンに映画観に行こうよ。今度は何に仮装する? そうだ、チキマとキーアにしようか」
 月明りを背にした見事なウィンクに射止められる。シンイチはアキラの適当さすら魅力に感じてしまう自分に笑うしかなかった。


















* end *







人狼の当時の主将の名が「タカトウ」なのは、後編ではシンイチが記憶を辿っているだけだから。
前編では人に説明するために変えていただけで、ウトタカとタカトウは同一人物。ヒラネカはカネヒラ(笑)
ちなみにシンイチは養子をとった数年後に主将に抜擢されてます。タカトウは隠居といいつつ実質的には
昔と変わらず君臨中……という設定を書き入れる場所がありませんでした。って、どうでもいいですね(笑)

※背景素材はNEO HIMEISM様からお借りしてリピート用に描き足し加工しました。