不治の病
作者:きりこさん

注意事項
・仙牧
・牧さんが仙道の事が大好き (勿論仙道も牧さんが大好き)
・勝手にMSM DOLLの二人からイメージして書きました

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「ただいま」
土曜の夕方、少しばかり急いで玄関の扉を開ける。

「仙道?いないのか?」
予想していた人物の出迎えが無く、少々拍子抜けした俺は抱えていた荷物をテーブルに置き、そう広くは無い部屋を見渡した。


通常の日本人男性平均値より俺と仙道の身長は揃って飛び抜けている。
備え付けのキッチンでは腰を屈めて作業する事が多かったため最近、奮発して自分たちの背丈に合ったシステムキッチンにリフォームしたばかりなのだ。
本来であれば今日は久し振りに二人揃ってのんびり過ごせる休日だったが、これを機に台所用具や鍋なども幾つか新しくしようとドライブを兼ねて水回りの買い出しや食事に行こうとしていた。

なのに仕事でのトラブルが発生し、俺は急遽朝から出掛ける事になってしまった。
その旨を仙道に伝えると

「えー、折角久しぶりに一緒に出掛けられると思ったのにぃ」
ただでさえ下がり気味の眉を更に垂れさせて残念そうにしている。
置いてけぼりを食った犬の様な顔を見て、申し訳無い気持ちが増してくる。

「悪いな…」
「仕事ならしょーがないです。牧さんだって本当は休日出勤なんてしたくないもんね。水回りは今あるもので取り敢えずは大丈夫だし、俺、今日は家でのんびりしてますよ」
そう言って、優しく微笑んで俺を責める事なく今朝だって快く送り出してくれた仙道に早く会いたいのに。

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寝室に入ると夕暮れのオレンジ色の陽射しの中で気持ち良さそうに眠る仙道が居た。
最近は寝不足気味と言っていたから、きっと昼寝でもしてるのだろう。

起こさない様に静かに傍に寄り、間近で眠る顔を見つめる。
形の良い眉、今は閉じられている印象的な瞳を作る長く濃い睫毛とシャープな輪郭。
高校の時に好敵手だった藤真や流川も際立った容貌であったが、仙道もその二人に劣ることない整った容姿をしている。
それに加えてスラリとした長身を兼ね備えていることに同じ男としてもバスケット選手としても多少の嫉妬を感じるほどだ。
(やっぱり、こいつは恰好良いんだな…)
すやすやと眠る仙道の薄っすら開いた唇に何だか急に触れたくなって、そっと顔を近づけると同時に長い睫毛がまたたき仙道が目を開けた。

「……牧さん?」
見惚れていたことがばれた気がして急に恥ずかしくなった俺は咄嗟に
「よ、よく寝てたな。具合が悪いとかじゃないなら、そろそろ起きろよ」
そう言って踵を返し、寝室を出ようとしたところ、ふいに抵抗を感じた。
振り向くとシャツの裾を仙道に子供の様に掴まれている。
「実は具合悪いんです…」
弱々しい声で訴えてくるから心配になり、しゃがんで顔を覗き込んだ。
しかし、にっこり微笑む姿はどう見ても元気そうにしか見えない。
訝しげな顔で見つめると仙道は片手で俺を引き寄せて心地良い低音の声でまるで秘密を話すように囁いた。

「内緒にしてたけど、俺、病気なんです」
「え?」
「『牧紳一熱愛病』って重〜い病気です。定期的に心にも身体にも牧さんって薬を与えて貰わないと駄目になっちゃう」
「バーカ」
「しかも、生涯治らない不治の病なんですヨ」

くすくす笑いながら、どちらからともなく唇を重ねる。
仙道の滑らかな舌がすぐに俺の口内を遠慮なく味わい始め、その熱さに応えたくて俺も舌を絡ませる。
お互いを存分に堪能し、濡れた吐息が零れ落ちた後、名残惜しげにちゅっと軽い音を立てて離れた。

「良薬は口に甘しだね」
ぺろりと唇を舐め、俺の大好きな魅力的な笑顔で仙道が馬鹿な事を言っている。
そんな所も愛しく思ってしまう俺の方がもっと重症の病気に罹患してるようだ。

「今日のお詫びにちょっと良いワインを買って来たから早目に夕飯にしようぜ」
「あ、牧さんが帰って来たらすぐに飯食えるように昼からビーフシチュー仕込んでおいたんです。一緒に飯の準備しましょ」

土曜の夜は始まったばかり。
俺の病への特効薬は今夜にでもたっぷり貰うとするかな。








* end *


けっこう長くMSM DOLLをやってますが、DOLLの二人をイメージした小説を頂いたのは初めて!
これが感涙せずにいられようか…! あまりに嬉しくてDOLLで使っているキッチンと寝室を写真風に
添えさせて頂きましたv きりこさんの小説と梅園のMSM DOLLとのコラボですよーキャー♪
あの人形達がこんなに格好良く素敵な小説にしてもらえて幸せです〜、ありがとうございましたvv

※上記の「注意事項」はきりこさんが書かれたもので、梅園が添えたわけではありません☆




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