Shooting star
作者:翡翠さん



大学2年生の牧と1年生の仙道は彼らが高校3年生と2年生の夏の終わりに想いを告げて恋人同士の関係になった。

現在二人は別々の大学に通っているが、それぞれの学校が同じ神奈川県内でそう遠くないため授業や部活が終わってから会ったり、実家暮らしの牧が一人暮らしをしている仙道のところを頻繁に訪れて泊まったり、一般的には半同棲といわれる状態で二人はいいお付き合いをしているのである。

晩秋のある日のこと、仙道は牡牛座と獅子座の流星群が見ごろという情報を大学のバスケ部の仲間に聞いた。

あまり流れ星を見た経験がない彼は今夜仙道のところに泊まる約束になっている牧にそれがどんなものなのか尋ねている。


「ねぇ牧さん、大学の部の仲間から牡牛座と獅子座の流星群が明日から明後日の未明に見ごろって聞いたんだけど、この辺から見えるもんなんですかね…俺、あんま流れ星とか星って見たことなくてよく分かんないんすよ。」

「うーん…見えなくはないが、空気が澄んでいる山の方がもっと見えるかもしれないな。良かったら明日の晩、箱根あたりに見に行くか?明後日はお互いに授業が午後からだから夜が多少遅くなっても問題ないだろう。」


思いがけない牧からのデートの誘いに仙道は目を輝かせて「マジっすか!?連れてってくれるの?」と、いつもの数割増の笑顔で牧に抱きついた。


「流れ星、見たいんだろ?」

「うん!ありがとう、俺の気持ちに応えてくれて♪牧さん、大好きです!」


抱きついたまま牧に感謝の意を述べる仙道。牧は自分より少し背の高い恋人の入浴を済ませて髪が下りた頭を撫でながらやや照れたような声を出す。


「…おい、大好きを安売りするな。まあいい、明日は学校の帰りがそんなに遅くならないようにするから藤沢駅まで車で迎えに行ってやる。夕飯を食って、それから箱根に行くことにしよう。山は平地より寒いから寒さ対策は万全にしておくように。」

「分かった。楽しみにしてます!嬉しいな〜明日は牧さんと流れ星デート♪」


仙道は牧と抱擁を楽しんだ後、明日の準備や何を着ていくかクローゼットの中にある服とにらめっこを始め、牧はそれを優しい表情で見守っていた。


翌日の夜―

約束どおり牧は藤沢駅で仙道を乗せて夕食をファミレスに入って済ませてから箱根へと車を走らせる。仙道の寒さへの備えはコート、手袋、マフラー、自慢の髪形が乱れないように…とイヤーマフラーまであって牧は思わず笑ってしまった。

車中の二人は「箱根駅伝のコースを走ってる!」「あそこは中継所になるんだ。」など様々な会話が絶えず、あっという間に箱根の天体観測スポットまで到着した。


車から降りて空を見上げると…澄んだ空に星がきらめいている。


「晴れていて良かったな。」

「はい!俺、星って月と北斗七星と北極星くらいしか分かんないけどここの空はすげーきれい…連れて来てありがとう、牧さん。」


仙道の声は弾んでいて、実にうれしそうだ。そんな彼を見て牧も連れて来て良かったと満更でもない様子である。


「喜んでもらえて良かった。俺も昔はよく星を見ていたんだが、最近は視力が0.5ぐらいまで落ちたからあまり星を見なくなってな。今はコンタクトか眼鏡がないと星座の形が分からん。」

「俺はコンタクトも眼鏡やグラサンしてても、裸眼で物見るのに目を細めてる牧さんも全部好きですよ。」

「はいはい、ご馳走さん。それより流れ星だ。」

「東の空に流れるんだから方角はこっちか。…あ!」

「流れたな。」


明るい流れ星が一筋流れた。星空の中に突然浮かんで消えるそれは幻想的だがどこか儚い。牧と仙道はじっと目を凝らして流れ星を追っている。明るさや大きさはそれぞれ違い、一つとして同じものがない…彼らは声には出さずに願い事をしながら箱根の夜空にしばらく見とれていた。


「たくさん願い事しました。」

「ああ、俺もだ。」


重なる二人のシルエット―

何を願ったか、お互いに語らないが『大好きな人との幸せが末永く続きますように』それに尽きるだろう。

帰りの車中、助手席で幸せそうな顔をして眠る仙道を横目に牧は心の中でつぶやく。


―今度はお前が俺を満足させる番だ―


牧の思いが通じていたのか…仙道の寝顔は先ほどよりにっこりと微笑んでいるようだった。







* end *






相互リンク記念にプレゼントして下さったの〜♪ もうしっかりデキてる感がたまりません。
ロマンチックな時間も似合う二人にうっとり…v ラブラブな二人をありがとうございましたvv

 


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