コール ミー!?
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作者:まつこさん |
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トゥルルルルルル・・・ 「はい・・・・・・」 「あっ、オレ・・・・・・」 「どちらのオレさまですか?」 「仙道です。」 仙道とケンカした。 理由は些細なことだ。 一緒に会う約束をしていたのに、練習の予定を忘れていたからとキャンセルをされ、それが積み重なることすでに、35回・・・。 オレだって、決して暇ではないのに。 「まだ怒ってるんですか?」 そんなことを平気で聞く仙道が許せなくて。 「怒ってはいないが。」 確実に怒っている声だと自分でも思っている。 「今は、忙しい。」 仙道のことを考えてばかりで、しなければならないことの半分も出来ていないからだとは、決して言わない。 「じゃ、またにします。」 「あぁ。」 あっという間に電話を切り、ため息が漏れる。 「最近、桜木はどうだ?」 「えっ?」 流川が、一瞬困った顔をしたように見えた。 何で、オレに聞くんですか?とでも言いたげだけれど、それでも、流川は「相変わらずあほうです」と答えた。 「そうか・・・。流川の目から見て、あいつはどうなんだ?」 「!?」 「あっ、イヤ、選手としてだぞ。」 「・・・・・・。」 流石の流川でも露骨に困った顔が分かり、オレ自身も何を聞いているんだと後悔する。 「まっ、いいさ、別に答えなくて・・・。」 「桜木は、成長してますよ、すごく・・・。」 流川はそう言うと、続けて話し出す。 「高校ん時は、メチャクチャなところばっかだったけれど、今は、仙道が上手くやってるから。 あいつも仙道のこと、なんやかんや言いながら、信頼してるみたいだし。」 「そっか・・・。」 「桜木のことじゃなくて、もしかして、仙道のことですか?」 あっさり、流川に言われ、ドキリとする。 コイツ・・・。 バスケで鍛えたポーカーフェースも役に立ちそうにない。 「いやっ、そんなつもりは・・・。」 確かに、オレは、この会話の中の仙道を待っていた。 「桜木が言ってました。」 「ん?」 「仙道が最近、桜木のことを「牧さん」って3回も呼んだって。」 「!!」 あの仙道が・・・。 「じいと間違えるなんて許せんって・・・。」 「一言多いな桜木は・・・。」 流川は、口元だけ微笑んでいて、オレもそれを見て観念して苦笑した。 仙道が、オレの名前を、オレの知らないところで発している・・・。 それを想像すると、顔が熱くなる。 意外に、おっちょこちょいなヤツだとは思っていたが。 「そう言えば、牧さんも、この間、オレのことを仙道って、言いましたよね・・・。」 「そうだったかな?」 流川には驚かされることばかりだ。 コイツは、オレをからかおうとしているのか、それとも天然か。 確かに・・・呼び間違えた。 当然のことながら、見待ちがえて呼んだんじゃない。 名前を呼びたくなるほど、仙道が欠乏していたから。 もしかしなくても、仙道もそうなんだろうか? そうじゃなきゃおかしいよな、3回も・・・。 「それにしても、今日はめずらしくよくしゃべるな。」 流川にそう言うと、流川は何かに気付いたように一瞬目を見開いた。 そして、少し頬を染めたような気がした。 「牧さんには、お世話になってますから。」 流川から思いもしないような言葉が返ってきた。 目を反らして言う辺り、流川が嘘をついていると分かる。 半分くらいは嘘じゃないかもしれないが、この反応からすると、桜木絡みか? 「たまには、地元ネタもいいな。」 そうオレが言うと、流川は、驚いた顔をしていた。 地元ネタって言っても、ここは神奈川で充分地元と言える。 しかも、バスケット界で、仙道のことも桜木のことも知らない人間は誰もいないのに。 それでも、流川は、曖昧だけれど頷いた。 オレたちだけにしか分からない地元ネタ。 流川は、桜木の話が出来てうれしかったんだろう・・・たぶん。 このオレも、仙道のことが聞けて、うれしかったように。 たまになら、いいだろう・・・。 幸い、流川もオレも、口が軽いタイプじゃない。 トゥルルルルルル・・・ 「あっ、仙道か?」 「牧さん!?」 ケンカの理由は大したことじゃなかったはずだ。 約束を破ったのも、誘いを断るのも、いつも仙道のような気がして。 アイツのきまぐれに付き合うのに、オレは、勝手に疲れただけだ。 そして、ついさっきまでのオレ自身に疲れていたのも否めない。 「次は、いつ会えるんだ?」 「じゃ、明日、空いてますか?」 「明日は、練習が入ってたんじゃなかったのか?」 「雨天中止ですから。」 「雨天中止って・・・。」 「オレは、明日の練習は休むとマズいんでとりあえず行きますよ。 だいたい、練習休んだら、牧さんにもっと嫌われちゃいますからね。 ただ、明日の牧さんの体が心配で・・・。」 「はっ!?」 「今から空いてませんか?」 「!!」 そういう意味か・・・。 オレをどんな体にするつもりかは知らんが、オレは、仙道の忠告を聞いて、それでも、仙道と会うことになった。 「仙道・・・。」 その日の夜、オレがそう呼んだら、仙道は、オレの名前を下の名前で呼び返した。 最近、たまにそう呼んでくる仙道に、変だから辞めろと呆れたこともあったけれど、仙道は結構気に入ってるらしい。 オレが、仙道のことを同じように呼ぶことを望んでいるのだろうか? そんなことをしたら、そのくせがついて、もしまた呼び間違えてしまった時、どうなるんだろう・・・と想像して、オレは苦笑する。 それでも、今日のオレは、仙道のことを、何もかもを許している。 本人を目の前にして名前を呼び合うそのことが、どれくらい自分が仙道のことを好きか、どれくらい仙道がオレのことを思っているかを分からせてくれたから。 そして、それから数日後、流川から新たな地元ネタを聞いた。 おわり
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シリーズになってきたのがとっても嬉しいです〜v この調子で毎年連載新作激烈希望!!
ゆっくりと思いを深めていってるのが伝わってくる可愛い二組のカプをありがとうございましたv |