デート
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作者:梨音さん |
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「牧さん、こっちこっち」 スタンド席の一番前で、仙道が手を振っている。 (あの長身で、迷惑な奴だ) 牧は頭を振りながら、仙道の所まで階段を降りて行った。 『あ、牧だ』 『え、海南の牧?』 『もう卒業してるよ。今は○大だ』 『やっぱなんか、すげーオーラがあるな』 周りの視線を集めていることに、牧自身は気づいていない。 「今日も、三井さんが指揮をとるみたいですよ」 仙道が顎で湘北ベンチを指した。 湘北高校は、高齢の安西監督の体調があまり思わしくないらしく、最近は牧と同学年の三井がコーチとしてベンチに入っている。 「あいつ、自分でプレイするのはやめてしまったのかな」 「どうなんでしょう。そうだとしたら、もったいないですよね」 コート上でウォームアップする選手を見つめていた三井が、ふとスタンド席を見上げた。 「あ、気づいたかな」 仙道が三井に向かって手を振った。 三井は気づいたのか気づかなかったのか、なんの反応も示さず、視線を戻した。 「あれ、分からないのかな」 自分が目立つ男だという自負がある仙道は、ちょっと不満そうな顔をした。 「ばかだな。ライバルチームの主将に、あいそを振りまくコーチがいるわけないだろう」 「あ、そうか」 しかし、ライバル校の偵察というには、格の違う学校同士の対戦だった。 「まあ、今日の試合は湘北が有利だろうな」 牧が落ち着いた調子で言う。 「流川がいるうちは、シード校からはずれることはなさそうですね、湘北は」 仙道はあくまでのんきである。 「ずいぶん余裕だな」 「オレ、負けないですもん」 試合が始まった。 牧の言う通り、試合は終始、湘北ペースで進んでいった。 「ねぇ牧さん、帰り、どこでメシ食いましょうか」 「まかせる」 湘北の勝ちはほぼ確実と見え、ゲームはそれほど緊迫感がない。 バスケとなると、たとえどのような試合であろうと目の色が変わる牧と違い、仙道は、ちっとも試合に集中していなかった。 しかし、牧が相手をしないので、仙道はまたコートに視線を戻す。 ちょうどその時、流川が出したパスを、相手チームの選手がパスカットした。 流川が手を抜いていたようには見えなかったが、窮鼠猫を噛むといったところだろう。 点差は開いていたので、そのままやらせておいても勝敗には影響がない。 しかし流川は、ムキになって相手からボールを奪い返し、あっという間にダンクを決めた。 やられたらやり返す。流川も王者のプライドを持った男なのだ。 「男の子だねぇ」 仙道がのんびりした口調で言う。 「そんな褒め方があるか」 牧は苦笑いをした。 ** fine *** |
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「ほのぼのは苦手」とおっしゃりながらも嬉しいほのぼのステキ作品を書いて下さりありがとうございましたvvv
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