師走に入ってからやっと重なった休日。窓からは風の音が聞こえそうなくらいにしなっている街路樹が見える。 今日は食料品の買出し予定があるため、牧と仙道は遅めの朝食を手早く終えた。 休みの日の食後くらいはドリップしたコーヒーをゆっくり飲みたいところだが、あえてインスタントですませる。 「今年は俺、クリスマスプレゼントはいらないから。先日お前に時計買ってもらったばかりだし、もう十分だ」 突然、なんの脈絡もなく牧が断りを入れてきたが、対する仙道もそれに驚くことなく頷いた。 「俺も同じこと言おうと思ってた。こないだ牧さんにiPodとそれにつなげるコンポ買ってもらったからさ」 それじゃあそういうことで……と牧がカップを片手に椅子から立ち上がる。それを追うように仙道の呟きが続いた。 「物は別に欲しいとかねーけど、クリスマスに交換っていうイベントがないのは淋しいかなぁ」 「……そう、かな。そうかもな」 もともとクリスマスといっても一緒に暮らすようになってからは外食はしなくなっていた。このイベント時はどこも込み合っていて気ぜわしい。それよりはゆっくりと過ごせる家での食事を選ぶように自然となっていた。 食事も普段よりオードブル的な惣菜が数品買い足されるのとケーキを食べるくらいで、特別なことはしていなかった。 ただ、ケーキを食べたあとにプレゼントは交換しあっていたのが、クリスマスらしい唯一のことといえた。 食洗機に食器を入れてから戻ってきた牧は、ふと閃いて提案をした。 「おい。 やっぱりプレゼント交換はしよう。その代わり、安い普段着なんてどうだ? 何枚あったって邪魔にならんし、少々趣味に会わなくとも家着なら問題ないだろ」 「いいね、それ! のった!」 寝癖のついた髪をセットしていた仙道は楽しそうな笑顔を洗面所から覗かせた。 お互いに仕事が忙しく、気付けばあっという間にクリスマスイブを迎えていた。 今年のイブは仕事は休みではあったが、あいにくの小雨降る天気で室内に入る日差しは朝から薄暗い。しかし部屋中の明かりとツリーの電飾もつけたので家の中は明るく、雰囲気も華やかに感じられた。 会社で注文しておいたチキンを温め、ちょっと豪華なブランチをすませる。二人用の小さなホールケーキを切り分ける頃にはお互いが少しそわそわしはじめていた。 「なんかさ。 すげー気になるよ。だって俺も牧さんも服を買うのけっこう面倒がるじゃん。サイズもあんまないし」 「俺も。XLじゃないと丈が全然足りないし、俺は胸板だって入らんから」 「で、どこで買ったの牧さんは」 「お前こそ」 小さなケーキをコーヒーでさっさと流すように食べ終えた二人は席を立った。 交換する品をそれぞれの部屋へ取りに行く時、牧の肩を仙道はすれ違いざま軽くつっついた。 「ね、どうせなら今日はお互いもらったものを一日中着て過ごすってのはどう?」 「いいよ。 あ、でもお前、まさかとんでもない柄の服とかじゃないだろうな」 「全然。拍子抜けするくらい普通だよ。じゃ、決まりね」 自室から出たのは二人同時だった。 そして手に抱えている紙袋のサイズも、紙袋に印字されている店名までも同じ。 お互い嫌な予感を表情に滲ませつつも交換をして、またそれぞれ部屋へ戻って袋を開けた。 「あーねー……。夫婦は似るっていうからな〜……」 「うわちゃー……。色は違うが同じかよ。参ったな……」 まさに日本の冬の家着といえばこれが定番。安くて着やすい、誰もが知ってるユニクロのフリースとロングTシャツを身に着けた相手をみやって苦笑いを浮かべた。 |
牧 | 「気持ちが沈むようなニュースしかないぞまったく」 |
仙道 | 「TVも全然面白いのやってねーや、つっまんねえ」 |
牧 | 「……」 |
仙道 | 「……」 |
牧 | 「……エアコン、少し暖気きついか? なんだか顔が火照るんだが」 |
仙道 | 「……あー…そうかもね。なんか顔熱いよ俺も」 |
牧 | 「フリース着てるからか?」 |
仙道 | 「それもあるかな」 |