「あ、牧さんだ」
「おう、お疲れ」
「お疲れ様っす。なんか機嫌いい?」
「あぁ、コレ見てみろよ」
「これは……お、バッシュ。牧さんがよく使ってるところのだ。大人な紫だね」
「コラボレーションモデルって事で貰ったんだ。撮影やインタビューの打ち合わせが、明日に決まってな。確か、オレ達のチームからは二人選ばれていたと思ったが……」
「そっか、もう一人って牧さんだったんだ」
「……って事は、もう一人はお前か」
「そっす。オレの打ち合わせはついさっき終わって、色々の日程も決まったんすよ」
「そうか……ん? おい、その手に持ってるモン、見せてみろ」

「言うと思った。ちょっと待ってくださいね……よいしょ」
「おぉ……良い青だな。どちらかと言うと水色か?」
「そうだね、サックスブルーって言ってたかも。これって手入れ簡単? 使い勝手良かったら、オレも使いてぇなって思っててさ」
「今使ってるのと併せて使えばいいんじゃねぇか? その日のコンディションもあるからな、いくつか持っていても困らねぇだろ」
「確かにそうかも。じゃあそうしようかな、ゴシドーゴベンダツノホド……」
「ははっ、言い慣れて無さすぎだろ」
〜 翌日の撮影終了後 〜
「いやー、撮影って結構時間掛かるんすね」
「オレもこんな長丁場になるのは初めてだ。カメラマンの拘りが凄かったな」
「ホントっす。オレ、右腕を15度上、左手は27度下、って言われた時なんか、旗上げゲームしてるみてぇだなって思っちまって」
「そうだよな、見てたオレが笑っちまったじゃねぇか」
「そのおかげで自然な笑顔で撮れたって言われましたけどね。んで、この靴は持ち帰って自由に使っていいんすよね?」
「あぁ、そのはずだ。撮影が終わるまでは汚しちゃまずかったが、もう終わったからな……そうだ、早速慣らしておこうぜ。使いたい時に新品のまま、ってよりはいいだろ。明日空いてるか?」
「空いてるよ、空けてたとも言うけど」
「空けてた? 別の予定を入れるつもりだったんじゃねぇのか?」
「牧さんなら撮影翌日にワンオンに誘ってくれるんじゃないかなーってね」
「なんだ、バレちまってたか」
「そりゃあね、何年相棒してると思ってんの?」
「確かにな。じゃあまた明日、時間は後で連絡する」
「はーい、お手柔らかにお願いします」
「心にもねぇ事言ってやがるな? 絶対本気にさせてやる」
「えっ、試合で使う前にシューズぼろぼろにしそうで怖いんすけど」
*end*