〜SS「By your side」&イラスト線画:梅園悠花 イラスト着色:きづた様 〜


拍手の特別ロングバージョン、SS付イラストを公開しておりました。
その二枚あるイラストのうち、傘に入ってる二人の着色が面倒で、「お暇な方は画像をお持ち帰りになってぬりえとして楽しんで下さいな。ぬりえをされた方には線画プレゼントとしますので、「着色:○○、線画:梅園悠花」とどこかに記入していただければご自分のサイトに掲載されてかまいません。縮小も自由、報告は任意で大丈夫ですv」として置いておいたのですよ。

それを拍手して下さったきづたさんが拾って下さり、しかも素晴らしく綺麗な水彩風着色を施して下さいました!!
自分の中途半端で放り出した絵が、まさかこんなに詩情豊かな色彩で帰ってくるなんて。感激〜vv
あまりに嬉しかったので、私も何度も美しい滲んだ色を見たいから、ページにしちゃいましたv
(絵をクリックすると線画が見れるようにしときました)
きづたさんのHPにも飾って下さっております。うふふ、嬉しいな〜v

小説内容は拍手用だったので、唐突に始まって唐突に終わってますがご容赦願います。
ではでは、どうぞv あ。紛らわしくなっちゃうので拍手で置いてあった絵の一枚目は削除してあります。


゚・*:.。.:*・゜ ☆.。.:*・°★゚・*:.。.:*・゜  「 By your side 」  ゚・*:.。.:*・゜☆.。.:*・°★゚・*:.。.:*・゜☆.。.:*・°


今にも降り出しそうなこのどろんと重い夜空のように、燻り続ける暗い怒りと羞恥の色をまとう自己嫌悪。
たかだかそんな、珍しくもないもんに押しつぶされそうだなんて、恥ずかしくて口に出す気もない。
そのくせ、足はまっすぐにあいつのいるとこへ向かっている。

そんな自分に反吐が出そうなくせに、ますます歩く速度は上がって。
急いで会いに行って、俺は何を言う? 何を聞かせたい? どんな返事をもらいたがっているんだ?
学校を出てからもずっとまわっているくだらない自問。
そんなもんへ律儀に分かり切った答えを幾度となく返しながら、
煮詰まった頭の片隅の、かろうじて平常心を保とうと働く部分が更に諭す。
引き返せ。どうせお前の口はあいつに会ったからって開きやしないのだから。
ただ混乱をあいつにまで与える、無意味どころか有害な時間を作りあげるだけなのだからと。

一つの頭の中で三人の俺が喧々諤々やっている。
それをどこか遠く感じながら、降りた駅の閉まりかけているキオスクで手土産なんかを探している自分。

突然だから、風呂にでも入ってるかもしれない。だとしたら、アイスがいいか。
晩飯後だとしたら、冷たい飲み物の方がいいかもしれない。
まだ寝るには早い時間だが、『寝るのも趣味のひとつ』の奴だからどうだろう。それなら…何がいいんだ?



重たいビニール袋を提げて歩いていると携帯が震えた。
舌打ちしつつ電源を切ろうとしたが、今向かう先の主の名前に驚いて、慌てて携帯を開く。

『こんばんはー。せっかくの部活休みだってのに、今日はえーと……用事で牧さん学校だったんすよね? お疲れ様っす』
以心伝心とはこのことか?と、驚きに返事が一拍遅れた俺に対して困り声が続く。
『あ、ごめん。忙しかった? ならまた後で』
「いや、全然だ。すまん、ちょっとボーッとした」
『声ひっくり返ってたよ、今ちょっと。あはは、寝てました?』
せっかくの明るい笑い声が俺の横を通ったトラックのせいで聞えにくい。
聞き漏らしたくなくて携帯を耳に強く押し当てる。
『今の音、車だよね? もしかして外? まだ帰れてなかったんすか。大変だったんだね』
「用事はすんだよ。……お前は? 今どこにいる?」
『家だけど? あ、TV煩いね。消すよ』
「違う、いいよ消さなくて」
『牧さんは? 今どこ? 外ってことは、もしかして飯まだだったりしないよね?』
「俺は…………800m前。お前のアパートから」
『え!? そりゃ嬉しいけど。ちょ、牧さん傘持ってないんじゃない? 急に降りだしてきたんだけど、』
ガタガタと声の後ろで物音がする。
「そんなに降ってないよ」
『返事になってねっすよ、さっきから。切るね』
「あ……」

突然電話を切られて急激に悲しくなる。夏の雨なんてどうでもいいのに。そんなことより電話を切らないでほしかった。
きっと突然来訪する非常識な俺のために、慌てて部屋片付けでもしてるのだろう。
そんなことしなくていいと電話をかけようと思ったが、あと少しで着くからとあきらめて携帯をしまった。

もう夜に訪ねたところで迷わなくなった仙道の住むアパート。
そろそろ見えてくるかと、カーテン越しに光が漏れる様子を思い浮かべて顔を上げてみた。
視界の先に見間違いようのない長身のシルエットがこちらに向かって駆けてきている。
足が止まった。

「何やってんすか、雨で肩冷やすなんてあんたらしくもない!」
叱りながら仙道は俺に長い腕を伸ばし、自分の傘の中へと引き込んだ。
「電話くれりゃ良かったじゃないすか、迎えに来いって。ああもう、こんな濡れちまって……」
髪を乱雑にまさぐられて水滴があたりに散る。
「仙道」
「はい?」
「すまない。突然押しかけて」
「はぁ? 何をいきなりかしこまって。あ、カバンとビニール袋、どっちも重そっすね。持ちますよ」
今さっき散った水滴が仙道の長い睫毛にかかっている。そんなことが何故か特別なことのように感じる。
濃く長い睫毛が水滴を乗せたまま、またたく。
ふるふると震える水は暗がりなのにほのかに光をはじいている。

クリックするときづたさんが着色してくれる前が見れますよ。

「……牧、さん? 聞いてる? ……大丈夫ですか?」
「……あぁ、聞こえている」

動きをとめた白い頬を両手で挟むと、仙道は何か言いたげに唇を薄っすら開けたまま見返してくる。
頭の中に沢山いたはずの煩い俺の分身のようなものは、一気に消えていた。
静けさを取り戻して俺はようやく息がつけた心地がした。

全てのものから全力で守りたい場所。弱り果て隠れるように逃げこみたい場所。
そのどちらもが、こいつであるだなんて。矛盾してるけれど、それが真実なんだ。

「お前の部屋に早く行きたい。……お前の中に今夜は入らせてくれないか」
頬を包まれている男の表情は、少し目をみはった後、例えようのない優しいものへと変わる。
「……夏の雨を甘くみちゃいけない。今夜は俺ん中であったまっていったらいいよ」

なまぬるいくせに芯を冷やす雨はいよいよ本降りになってきた。
薄っぺらで小さな一つの傘の下、心よりも早く育ち過ぎた体を無理やり寄せ合って歩きだした。




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弱っているけれど、まだ仙道にそれを見せるには至ってない牧。
でもやっと自分にとっての仙道の重要性に気付いたという話でした。分かりにくくてすいません☆
話も煮詰めるのやめちゃったんで。たはは☆

私にとってとても素晴らしい記念になりました。ビバ☆合作!!
きづたさん、こんな低解像度の線画に美しい色付けをして下さり、本当にありがとうございましたvv








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