スタメンメンバーだけの三次会。慣れない酒にへべれけに酔っ払った若者ならぬバカ者達は、牧に彼女がいないのはおかしいという話題で盛り上がった。最初は出会いがないとか恋愛に興味がないから放っておけと、別の話題に移行させようとしていた牧であったが。おかわりした烏龍茶のコップが烏龍ハイに擦りかえられていたことに気付かずに一気飲みをしてしまい……
「こんな老け顔でチェリーボーイとは間違ってるだの、風俗いって筆おろししてこいだのと。しまいには女用意するとまで言われて。いい加減腹が立ったんだ……」
「あー…。牧さん正確には童貞じゃないし、そりゃ腹も立ちますよ。そんで、“恋人がいるから放っておけ” の台詞が出てしまって、更に騒がれた、と」
「証拠を見せろというから、お前がくれたストラップを見せたが信用されなくて」
スポーツブランドの、カジュアルだが品のある皮のストラップ。仙道と色違いのそれを牧はとても気に入って大事にしていた。
しかし他の酔っ払いどもは皆、『女がこのメーカーを知ってるわけがない』『自分で買ったと正直に言っとけ』『もしかしてエアー彼女?』と、かえってからかいを強めた。
「そんなお手軽な挑発に乗って言っちまったんだ……」
「“男なんだからメンズのメーカー知ってたって不思議でもなんでもない!” ……でしたっけ」
「そう。それで誰だの話になって─── 」
真っ赤になって頭を抱える牧を見つめながら、仙道は小さく呟いた。
「恋人と みんなに言って くれたから 7月4日は 仙牧記念日」
微妙に字余りの下手な短歌もどきは、己の愚行を悔やむ恋人の耳には届いていなかった。