そうはいっても何もかけてやらないで寝かせておくわけにもいかず、そっと声をかける。
「…寝るならベッドに行け。風邪ひくぞ」
僅かに眉間に皺を寄せると、目を瞑ったまま寝ぼけた声が返される。
「……寝て、…ない」
「寝てないのか?」
「うん……」
いつも思うのだが、何故こいつは寝てるのかと聞けば寝てないと、起きているのかと聞けば寝てると答えるのだろう。
天邪鬼ともちょっと違う、妙な意地が感じられておかしい。それを可愛いと思うようになってしまった自分は、かなりおかしいかもしれない。
また寝息に戻ったところで、独り言のふりをして呟いてみた。
「なんだ寝ないのか。俺は眠いから昼寝するかなー」
仙道は慌てて雑誌を放り出すと牧を見上げた。まだ少し寝ぼけた余韻が残る己の顔に気付いていないのか、少し得意気に口の両端をあげてみせた。
「なーんだ、牧さん眠いんだ。なら、俺も昼寝付き合ったげるよ」
思わず牧はぷっと吹き出した。仙道はどうかしたのかと問うように首を傾げた。
「なんでもない。じゃあ、昼寝に付き合ってもらうとしようかな」