J
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「とにかく珍しいパンということだ。彰は世情がよくわかっているようだな。よかろう、では君に銃を与えよう。これと同じS&Wだ」 |
仙 |
「ありがとうございます。色違いなんすね」 |
J
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「君は銃に関してはシロウトなのか? 君のはM686で、私が持っているのはS&MのM629。型が違うのだよ」 |
牧
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「そんなマニアックな……。おいJoe、俺にも銃はないのか」 |
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J
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「彰。先に言っておくが、その銃に弾は装填してない」 |
仙 |
「なんだ〜、つまんねーの…」 |
J
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「紳一にはM629をくれてやろう。受け取れ。これには弾を装填してある」 |
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牧が手を伸ばしたところでジョーカーが銃を踏みつけました。
J
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「Freeze! 今やるとは言ってないそ、紳一」 |
牧
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「受け取れっつったのJoeじゃねぇか。あ。しかも自分だけワルサーP38かよ。汚ねぇなぁ」 |
J
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「フン。弾丸の数をチマチマ数えて悪党ができるか!」 |
牧
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「そーだな。腕に自信もなければ、数もまともに数えられない奴にはリボルバータイプは無理だもんな」 |
J
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「くっ…! 彰、この口の減らない男の両手をイスに縛りあげろ! こいつをホリョにする!」 |
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仙
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「わ〜、楽しいー ね、牧さん、もうちょっときつく縛っても大丈夫?」 |
牧
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「痛くはないが…いつからお前はJoeの仲間になったんだよ。しかもなんでお前、そんなに嬉しそうなんだ?」 |
J
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「彰。そんな縛り方では右腕が自由で危険じゃないか。紳一、左手に右手を重ねろ」 |
牧
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「そんな窮屈な格好させられるなら、これ以上遊びには付き合わない」 |
J
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「チッ。……彰、ホリョの右腕は右フトモモと一緒に縛っておいてくれ」 |
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J
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「次はその紙袋に、カゴに入ってるパンを全部いれろ。いれたらこっちによこすんだ」 |
牧
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「俺達の二日分の朝飯……」 |
J
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「ヒョーロー攻めというやつだ。ふはははは! これが一番お前にはこたえるだろう!」 |
仙
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「Joeさん、クロワッサンとハムサンドは袋に入りきらないっすよ?」 |
J
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「仕方ない。別の袋をもってくるんだ。それにこっちのテーブルのパンもいれろ」 |
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J
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「……なんだその目は。ホリョになってパンも奪われて悔しいか」 |
牧
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「二個くらい残していってくれよ。俺達まだ一個も食ってなくて腹減ってんだ」 |
J
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「フッ……命乞いか。泣いてドゲザでもすれば考えなくもないぞ」 |
牧
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「命乞いなんてしてない。つか俺縛られてんだけど。土下座の意味、わかってんのか?
…まあいい。それよりさっき言いかけてたビジネスの話とやらを聞かせろよ」 |
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ビニール袋に調理パンを入れていた仙道は、なんとなく銃の引き金をひいてみました。 すると、プラスチックの弾がジョーカーの頭にパチンと直撃しました。
J
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「Ouch!」 |
仙
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「わっ! すんません、弾入ってないって聞いてたから! 大丈夫すか!」 |
牧
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「大丈夫か、Joh? ほらな、銃を人に向けると何がおこるかわからんもんだろ?」 |
J
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「……しまった……私としたことが、弾を抜いてない方を渡してしまっていたのか」 |
牧
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「びっくりするほどマヌケな悪党だな」 |
J
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「しかたない…。彰! こうなったら私と勝負だ! 勝った方がパンとホリョを総取りだ!」 |
仙 |
「え、そんなオイシイ新ルールに変更したの? わ〜、俄然やる気出てきちゃったよ」 |
牧 |
「今、頭打たれて負けてたくせに。何が勝負だ。ったく、手下にしたり敵にしたりとめちゃくちゃだな」 |
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二人が銃を構え臨戦態勢に入ったところで電話がなりました。仙道は銃をかまえながら受話器をとりました。
仙
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『はい、牧です。はい、ああ、どうも。そうです……こちらこそお世話になってます…』 |
J
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「ふふん、『牧です』だって。やーらしーねぇ〜、ヒューヒュー!」 |
牧
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「何言ってんだ。あんたは小学生か」 |
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仙
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『はい、Jokerさんなら来てますよ。……ええ、クロワッサンを二つ買ったようですけど。……はい、それだけみたいですねぇ』 |
牧
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「誰からだ? もしかしてJokerの元奥さんの奈々未さんか?」 |
仙
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「そっす」『あ、いえすんません。そうです、そのモデルガンを三丁見せてくれてますけど。……あはは、いいえ、大丈夫ですよ〜』 |
J
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「な……奈々未ちゃん……なんでここがわかったんだろう……」 |
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J
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「帰る。お邪魔しました」 |
仙
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『あー…そうですねぇ、もう昼過ぎてますもんね。……はぁ。や、そりゃ仕方ないすよ、お腹すくと誰でもイライラしますから』 |
牧
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「おい、待てJoker。モデルガン二丁とパンを忘れているぞ」 |
J
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「モデルガンは土産だ。またいつか勝負をする時まで腕をみがいておくんだな」 |
牧
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「待てって。手ぶらで戻るより、その紙袋に入ったパンを持っていく方が少しは彼女の怒りも減ると思うぞ?」 |
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J
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「沢山ありがとう。ごちそうさま。この借りは弟のJokerにつけておいてくれ」 |
牧
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「はいはい。いいから急いで帰れよ。気をつけてな。奈々未さんに宜しく伝えてくれ」 |
仙
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『あ、なんかJokerさん、もう帰られるみたいですよ? ……や、そんな。うちは別に、本当に大丈夫なんで』 |
J
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「彰、勝負は預けておく。鍵はきちんとかけたまえよ! さらばだ!」 |
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Jokerはバタバタと慌しく帰っていきました。仙道は電話が終わったので牧の隣へやってきました。
仙 |
「突然の珍客で驚いたけど、楽しかったですね」 |
牧 |
「Jokerは奈々未さんに朝飯のパンを買ってくると言って出かけて、そのままうちに遊びに来たってとこか?」 |
仙 |
「ご明察。待たされ過ぎてお腹が減ってイライラした奈々未さんが、買ったパンがたった二個と知って少なくて怒ってた」 |
牧 |
「パン持たせてよかったよ。……で、お前はいつになったら俺を自由にしてくれるんだ?」 |
仙 |
「こんな大チャンスをそのまま逃すわけにはいかないんでねぇ♪ 特に今日のあんた、なんだか男前で色気たっぷりだし」 |
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仙 |
「実は俺がこのソファを選んだのは、いつかこうしてあんたを拘束してみたいなーって下心もあったんだよね〜♪」 |
牧 |
「まさかそんなくだらん変態な理由で選んでいたとは。全く気付かなかった…」 |
仙 |
「両手とも頭上に上げさせて、手摺に拘束したかったけど。これでも十分燃えるな〜! うはははは」 |
牧 |
「おい、まさか本気か?」 |
仙 |
「本気も本気♪ 自由を奪われたあんたを鳴かせてドロッドロにするんだ」 |
牧 |
「はぁ……。本気ってんなら仕方ねぇなぁ」 |
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牧は苦笑いを零すと、左足で仙道を軽々と押しやりました。
仙 |
「うわっ! 危ねぇ〜! TVボードに後頭部ぶつけるとこだったじゃないすか」 |
牧 |
「お前が本気なら、俺だって本気で抵抗しないとな♪」 |
仙 |
「チェ。両脚とも動く状態じゃやっぱ無理か」 |
牧 |
「こんな腹減ってて、しかも真昼間から付き合ってられるか。おい、さっさと外せ。飯にするぞ」 |
仙 |
「はぁい。……くっそー、いつか野望達成してやる」 |
牧 |
「いつでもかかってこい。返り討ちにしてやる♪」 |
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突然のJoker来訪。たまにくるお邪魔虫も生活のスパイスということで☆
今後は二人とも、ソファで熟睡したら危険かもしれないですね〜(*^q^*)。
* end *
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